横浜地方裁判所 判決

横浜地裁 平成30年(ワ)4751
原告 嶋﨑量 被告 選定当事者 北村重美、佐々木良一、大橋怜、他2人

判決文概要

主文
被告は3万円払え
年5分の遅延損害金
訴訟費用は10分し,9を原告,1を被告負担とする
仮執行付き

第3 当裁判所の判断
(1)省略(最高裁 平生19年4月24日判決 民集61巻1102頁)
(2)これを本件についてみると,まず本件懲戒請求者につき神奈川県弁護士会は明らかに懲戒事由がないこと判断しており,本件各懲戒請求に事実上又は法律上の根拠があるとうかがわせる証拠はない。
この店につき被告らは,本件書き込みが,懲戒請求者に対して責任を求める旨の佐々木弁護士の書き込みを擁するものであり,佐々木弁護士と共謀して懲戒請求者を脅迫する内容であるため懲戒事由に該当する旨主張する。
そこで判断するに,本件書き込みは,その文面上,原告が佐々木弁護士に対して根拠の乏しい懲戒請求を大量に受けたことについて同情するという内容にとどまり,原告が懲戒請求者に対して何らかの対応をすることを示したものではない。したがって,本件書き込みをもって原告の懲戒請求者を脅迫する内容であると読み取ることはできない。また,「それ相応の責任をとってもらいますよ」との佐々木弁護士の書き込み部分が脅迫に当たるとみる余地があるとしても,本件書き込みは佐々木弁護士と協力ないし共謀して懲戒請求者に責任を取らせることを内容とするものではない。したがって上記主張は採用できず,本件各懲戒請求事実上又は法律上の根拠欠くものと認めるべきである。

次に本件各懲戒請求が上記の根拠に欠けることを選定者が知り,又は知り得たがについてみると,選定者は本件ブログの呼びかけに応じてその運営者から送付された用紙に氏名などを記載して本件各懲戒請求をしたのであり,選定者が懲戒請求の根拠について調査又は検討をしたことは本件の証拠上うかがわれない。そうすると選定者は少なくとも本件各懲戒請求が上記の各根拠を欠くことを知り得たものと解されるから,本件各懲戒請求は不法行為責任を構成すると判断するのが相当である。

2 争点(2)(原告の損害額)について
(1)懲戒請求を受けた弁護士は根拠のない請求により,名誉,信用を不当に侵害される恐れがあり,また,その弁明を余儀なくされる負担を負うことになるところ本件においても証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば,原告は本件各懲戒請求を受けて弁護士としての名誉感情を傷つけられるとともに見ず知らずの者から多数の懲戒請求がされたことに対して恐怖心を抱くなどの精神的損害を被ったことことが認められる。一方選定者が本件各懲戒請求をしたことにより原告の社会的信用が現に低下したことについての具体的主張はない。また,本件各懲戒請求が明らかに根拠を欠くことは前記1(2)に説示したとおりであり,神奈川県弁護士会の綱紀委員会においては本件各懲戒請求を含む合計591件の懲戒請求を一括して調査しさしたる期間を要することなく懲戒委員会の審査を求めない旨の決議をすることに至っているのであって本件各懲戒請求に対して弁明するために原告が多大な負担を余儀なくされたとは解し難い。以上の諸事情を考慮すると本件における慰謝料の額は選定者それぞれにつき3万円と認めるのが相当である。
(2)原告は慰謝料に加え弁護士費用相当の損害も請求する。そこで判断するに,原告は弁護士でであり,また,本件は自らが弁護士として懲戒請求受けたことに関する事案であって,本件の訴訟活動を自ら追行するに足りる専門的知識経験を有するものと解される。そうすると本件において原告に弁護士費用が生じたとしても,これが選定者らによる本件各懲戒請求と相当因果関係のある損害に当たると認めることはできない。
3 結論
以上によれば原告の請求は被告(選定当事者)らに対し
選定者それぞれのために3万円及びこれに対する遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるから主文のとおり判決する。

裁判長裁判官 長谷川浩二
裁判官  長岡慶
裁判官 小松秀大